特別研究員
専門
火山物理学
略歴
2018年3月 京都大学理学部卒業
2020年3月 京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 修士課程修了
2022年4月-2023年3月 日本学術振興会 特別研究員DC2
2023年3月 京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 博士(理学)取得
2023年4月 日本学術振興会 特別研究員PD
2023年5月- 防災科学技術研究所に入所
最近の主な研究活動
- ディスドロメータによるリアルタイム降下テフラ観測
- 移流拡散モデルTephra4Dの開発と降下テフラ計算
- 桜島ブルカノ式噴火のテフラ分離プロファイルの研究
- 動的画像解析(DIA)による火山灰粒子の粒径・形状パラメータの測定
主要論文等
*[New!] K. Takishita, A. P. Poulidis, M. Iguchi (2024). Tephra segregation profiles based on disdrometer observations and tephra dispersal modeling: Vulcanian eruptions of Sakurajima volcano, Japan. Earth Planets Space 76:29. https://doi.org/10.1186/s40623-023-01952-y
桜島のブルカノ式噴火の噴煙から分離するテフラ粒子の鉛直重量分布(論文中ではTephra Segregation Profile; テフラ分離プロファイルと呼んでいます)を39回の観測事例から見積もった論文です。降灰シミュレーションに使われる噴煙モデルでは一般的に,粒子のほとんどが噴煙の上端付近から粒子が分離するように設定されますが,観測事実からは噴煙の下部からも多量の粒子が分離することが推定されています。筆者らは,噴煙高度の時間変化を考慮した説明を試みました。噴煙高度が低く単位時間あたりの噴出量が低いフェーズでも,継続時間が長い場合には,瞬間的な爆発と比べて無視できない量のテフラ粒子が放出され,これらの噴出も考慮すべきであることが示唆されました。
また,広い落下速度範囲の粒子が一斉に到達する観測事実を計算では再現できないことも明らかになりました。これは一般的な移流拡散モデルが,粒子の落下速度を各粒子の終端速度で降下するという前提で計算しているためであり,細粒粒子が濃集している場合には周辺の大気や他の粒子を引っ張り,個々の粒子の終端速度よりも高速に降下する「灰のカーテン」を考慮すべきであることが示唆されました。
この論文は先に公表された2本の論文と合わせて,筆頭著者の博士論文を構成しています。
*K. Takishita, A. P. Poulidis, M. Iguchi (2022). In-situ measurement of tephra deposit load based on a disdrometer network at Sakurajima volcano, Japan. Journal of Volcanology and Geothermal Research 421:107442. https://doi.org/10.1016/J.JVOLGEORES.2021.107442
ディスドロメータを用いて降灰重量を求める換算式を求めた論文です。降灰量は一般的に研究者が現地に行き,堆積した火山灰を採取することで計測されます。桜島のブルカノ式噴火のように年数百回小規模な噴火を繰り返す火山で,各噴火の降灰量を求めたい場合や,大規模噴火における降灰量の時間推移を調べたい場合には自動観測が必要となります。そこで筆者らは,元々雨量計として開発されたレーザー式の観測機器・ディスドロメータを降灰量計として活用できるよう,桜島の島内にディスドロメータを設置し,その横に堆積した火山灰を採取して計量した結果と比較することで,降灰量を見積もる経験的な換算式を求めました。設計上検知されない0.25 mm以下の細粒粒子群も検知されることが示され,それらの寄与も考慮した点で,従来の便宜的な換算式よりも優れています。ディスドロメータは毎分の時系列データを出力するので,人的コストを抑えながら降灰イベントの推移を捉えることができます。
*M. Iguchi, H. Nakamichi, K. Takishita, A. P. Poulidis (2022). Continuously Operable Simulator and Forecasting the Deposition of Volcanic Ash from Prolonged Eruptions at Sakurajima Volcano, Japan. Journal of Disaster Research 17:805–817. https://doi.org/10.20965/jdr.2022.p0805
桜島での降灰連続シミュレータを提案した論文です。瀧下は主にディスドロメータ観測網によるモニタリングと,シミュレーションの仕様決定に携わりました。
*K. Takishita, A. P. Poulidis, and M. Iguchi (2021). Tephra4D: a python-based model for high-resolution tephra transport and deposition simulations— applications at Sakurajima volcano, Japan. Atmosphere, 12, 331, https://doi.org/10.3390/atmos12030331
小規模噴火に適した移流拡散モデルTephra4Dを提案した論文です。ほとんどの移流拡散モデルはプリニー式などの大規模噴火を念頭に開発されています。大規模な噴火は地表付近の粒子の移動が降灰シミュレーションの結果に大きな影響を与えない一方,桜島のブルカノ式噴火のように小規模な噴火では,山岳地形に起因した複雑な風速場が降灰シミュレーションに大きな影響を与えます。そこで筆者らは,同じ高度から分離する同じ粒径の粒子群の重心を追跡する移流拡散モデル・Tephra2を基に,水平方向に不均質で上下成分も考慮に入れた高精細な風速場を考慮した計算ができる移流拡散モデル・Tephra4Dを開発しました。Pythonのソースコードを下記のGithubで公開しています。本モデルを使用したいもののうまく実行できない場合は,Githubに明記したアドレスからお問い合わせください。
所属学会
- 日本火山学会
- 日本地球惑星科学連合
所属している基盤的研究開発センター
火山研究推進センター